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生産緑地は売れない?30年経過後の選択肢や売却のポイントを解説

カテゴリ:不動産売却/買取

● 相続した生産緑地を売却できる?
● 生産緑地の指定を受けたときから30年経ったらどうなる?
● 生産緑地を売却する方法や注意点が知りたい

都市計画法が施行され、地価の上昇にともなう農業経営者の固定資産税や相続税の負担を軽減するために生産緑地法が制定されました。
生産緑地に指定されたら、30年間は農業を経営しなければなりません。

この記事では、営農の継続が困難な場合や30年経過したときはどうすればよいのか、売却する際に注意しておきたいポイントをくわしく解説します。

この記事でわかること

● 生産緑地が売れないといわれる理由
● 指定を受けてから30年経過したときの選択肢
● 生産緑地を売却するときに押さえておきたいポイント

生産緑地が売れないといわれる理由とは?

生産緑地とは、市街化区域内にあり条件を満たして指定を受けた農地です。
指定を受けると、30年間は農業を経営する義務を負うため、売却するには要件を満たしたうえで手続きをしなければなりません。

こちらでは、生産緑地が売れないといわれる理由を、売却までの流れを含めて解説します。

生産緑地には行為制限があるから

生産緑地の指定を受けた農地には30年間の営農義務があり、住宅を建てるなど土地に手を加えられません。
指定から30年間は、売却や貸し出す行為も制限されています。

これは、一定の条件を満たせば、税制上のメリットを受けられる制度だからです。
生産緑地に指定されると、相続や遺贈で土地を取得した方は相続税の納税が猶予されます。 固定資産税も税率は低く設定されており、10アールあたり数千円です。
都市部であっても農地や緑地は必要とする考え方から、生産緑地を維持しやすいよう、農産物の加工や販売のための施設を建築できるなど行為制限は緩和されてきました。

しかし、宅地や商業施設への転用はできず、一般への売却も容易ではありません。
生産緑地を売却するには指定の解除など、さまざまな手続きが必要です。

生産緑地の指定解除には条件がある

生産緑地を売却するためには、自治体の農業委員会に指定解除の申請をしなければなりません。
指定を解除しなければ、一般への売却や宅地などへの転用ができないからです。
生産緑地の指定解除をするには、以下の要件のいずれかに該当していなければなりません。

● 指定から30年が経過している
● 主たる従事者の病気や障害で継続が困難
● 主たる従事者が死亡し相続人が農業経営をしない

生産緑地に指定されたときから30年が経過し、継続を申し出なければ指定は解除されます。
病気や障害により、主たる従事者が農業の経営が困難な状況だと自治体が判断した場合も、指定解除の要件です。
指定が解除されれば売却は可能ですが、相続の場合、宅地と同じ税率の固定資産税や相続税が課せられます。

そのため、生産緑地を相続したときは、売却額で税負担をまかなえるかどうかを慎重に検討する必要があります。
農地は面積が広く、すぐに買い手が見つからない可能性もあるため、税負担を考慮して農業の継続を選択する方も少なくありません。

要件に当てはまってもすぐに指定は解除されない

生産緑地の指定解除の要件に当てはまっても、何もしなければ解除されず、自治体に買い取りの申し出をしなければなりません。
自治体に申請してから、およそ1ヵ月程度で回答が通知されるので、買い取りができる場合は時価を基準に価格を相談しましょう。
自治体が買い取りできなければ、買い取りを希望する農業従事者があっせんされますが、用途が限られているため見つからない可能性もあります。

生産緑地の指定解除を申請できるのは、約2ヵ月のあっせん期間で買い手が見つからなかった場合です。
最終的に指定が解除され、宅地などの用途で売却できるようになっても、それまでには3ヵ月かかります。

生産緑地を売却するには、要件に当てはまったうえで必要な手続きをしなければならないため、すぐには売れないのが実情です。

生産緑地は30年経過するとどうなる?

生産緑地には30年の期間行為制限が設けられており、農業経営を続ける必要があります。
税制上の優遇を受けられる点がメリットですが、30年経過するとどうなってしまうのでしょうか。

ここからは、生産緑地に指定されたときから30年経過すると何が起こるのか、どのような選択肢があるのかを紹介します。

固定資産税の優遇措置がなくなる

生産緑地に指定されたときから30年経過すると、固定資産税の優遇措置がなくなって宅地並みの評価となり、段階的に負担が増えていきます。

しかし「特定生産緑地」の指定を受ければ、これまでと同じ優遇措置が適用されるため、農業経営を続ける場合は申請を検討しましょう。

特定生産緑地は、一斉に指定された生産緑地で30年が経過する「2022年問題」への対策として、制定されました。
生産緑地の指定から、30年を迎える前に申請しなければならず、特定生産緑地の指定を受けた場合、10年間は生産緑地の義務と優遇を継続できます。
相続した農地であれば、相続税の優遇措置を受けられる点もメリットです。

ただし、指定を継続しなければ猶予された相続税や、猶予された期間の利子税を納付しなければなりません。
法改正により農産物の加工や直売所、レストランなども生産緑地の用途として可能になり、税制上の優遇を継続したい方にとって選択肢は広がっています。

また、農地を貸し出す場合にも、特定生産緑地の制度を利用できます。
この制度を利用する場合は、10年間継続して農業を経営できるかどうかや、高額な相続税が発生するかどうかを踏まえて慎重に検討しましょう。

自由に土地を利用できる

30年経過した生産緑地は自治体に買い取りを申し出られるため、売却で固定資産税の負担をなくしたい方や農業経営をやめたい方にとってメリットです。

農地は農業経営者にしか売却できませんが、宅地などに変更すれば売却できる可能性があります。
自治体に買い取りを申し出ても農業従事者の減少から買い取ってもらえず、あっせんでも買い手が見つからない場合は一般の不動産市場で売却しましょう。
「2022年問題」が浮上した当時は、農地が一斉に宅地化されて不動産価格が暴落する可能性が考えられました。

しかし、行為制限の緩和や特定生産緑地の制定により、影響は限定的とされています。
生産緑地だった農地の指定が解除されたあとは、売却でまとまった収入を得られるほか、農業を続けなければならないプレッシャーからも解放されるでしょう。

生産緑地のままにもできる

指定から30年経過した生産緑地を解除せず、特定生産緑地の指定も受けずに従来どおりの農業経営も続けられます。
生産緑地のままにしておけば、いつでも自治体への買い取りの申し出ができます。

現在は農業をしていなくても、数年以内に農業を開始する予定がある場合には、生産緑地のままにしておく方法がおすすめです。

しかし、生産緑地のままにしておくにはデメリットもあるため、慎重に検討しましょう。
特定生産緑地の申請をしなければ、先述のとおり固定資産税の優遇が受けられません。
段階的に宅地並みの税額に増えていき、相続税の猶予は現役世代のみで次の世代には適用されない点に注意しましょう。
30年経過した生産緑地をそのままにしておくかどうかは、納税負担を考慮したうえで判断してください。

生産緑地を売却するときに意識すべきポイントと注意点は?

生産緑地を売却する際は、いくつか意識すべきポイントがあります。
売却によって収入が得られるメリットはあるものの、納税義務が発生するなど注意点もあるため、事前に確認しておくと安心です。

解除後は生産緑地に戻せない

生産緑地を売却する場合は指定の解除が必要ですが、解除後は元に戻せません。
売却するためには、最初に自治体へ買い取りの申し出をしなければなりませんが、必ず買い取ってもらえるわけではありません。
自治体の買取が不可能な場合、買い手をあっせんしてくれるものの、買い取ってくれる農業従事者が見つからないケースもあります。

それを考慮したうえで生産緑地を解除して宅地に転用しても、面積の広さからすぐに買い手が見つからず売れ残る可能性がある点に注意しましょう。
宅地に転用しても買い手が見つからなかった場合は、生産緑地の固定資産税の優遇措置がないため税負担は高額になってしまいます。

一方で、生産緑地であっても栽培した作物の直売所やレストランの経営、農業従事者への貸し出しなどの利用方法があります。
解除したあとは生産緑地に戻せないため、売却を検討する際は買い手が見つかるかどうかや、固定資産税の優遇を受けながら農地を活用する方法がないかを検討しましょう。
貸し出す農業従事者が見つけられそうな場合や、アクセスがよく飲食店や直売店での売り上げが見込めそうであれば、売却するかどうかを慎重に判断してください。

相続税の猶予を受けているか確認する

生産緑地には、相続税が猶予される優遇措置が設けられています。

しかし、指定を解除して売却すると、猶予されていた相続税は相続時までさかのぼって納めなければなりません。

場合によっては高額になるため、あらかじめ優遇措置を受けていた相続税額を確認しておきましょう。

また、生産緑地の指定解除後は、猶予されていた相続税額に対する利子税の納付も必要です。

ほかにも、生産緑地の解除や売却に関わる税金には、固定資産税の増額や売却利益にかかる譲渡所得税があります。
譲渡税の内容は「所得税」と「住民税」の2つで、2037年12月までは「復興特別所得税」も納めなければなりません。
税金以外に地盤改良工事費が必要になるケースもあるため、生産緑地を売却する際は、事前に支払うべき費用を把握しておきましょう。

早めに売却する

生産緑地を解除したら固定資産税が高くなるため、解除後はできるだけ早く売却するのがおすすめです。

農地を宅地に転用する場合、農業委員会に転用許可申請をする必要があり、その後地目変更の登記をしなければなりません。
宅地として売り出せば、買い手が見つかりやすくなりますが、転用の申請をしてから許可が出るまでには、一般的に1ヵ月半から2ヵ月半かかります。

また、土地が広すぎると宅地としては売れにくい一面もあるため、適度な広さに分筆するとよいでしょう。
農地の売買に慣れている不動産会社に相談や依頼をすると、スムーズに売却できる可能性があります。
条件によっては不動産会社が買い取ってくれたり、転用の手続きもサポートしてくれたりする場合もあるので、生産緑地を解除する際は相談先も決めておきましょう。

まとめ

生産緑地は固定資産税や相続税の優遇を受けられる制度です。

売れないといわれる理由は、指定を解除しなければ売却できず、そのためには要件を満たさなければならないからです。
2022年には多くの生産緑地が30年経過するため、行為制限の緩和や優遇措置を継続して受けられる法改正がおこなわれてきました。
売却には時間がかかる可能性があり税負担が増えるため、30年経過する生産緑地をどうするのか、将来を見据えて慎重に検討しましょう。

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