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生産緑地とは?売却するときの流れやメリット・デメリットを解説

カテゴリ:不動産売却/買取

● 生産緑地を相続する予定だけど、そもそも生産緑地って何?
● 相続した生産緑地を普通の土地と同じように売却できる?
● 事情があって農業をやめるため、生産緑地を売却したい

生産緑地と聞いても、農業に携わっていなければどのような土地を指しているのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
生産緑地は一般的な土地と同じように自由に売却できるわけではなく、いくつかの条件をクリアしたうえで、自治体へ申請しなければなりません。

そこで本記事では、生産緑地とは何か、売却するときの流れや売却するメリット・デメリットなどを併せて解説します。

この記事でわかること

● 生産緑地とは何か
● 生産緑地を売却するときの指定解除条件や流れ
● 生産緑地を売却する際の注意点やメリット・デメリット

生産緑地とは?目的や問題点

生産緑地とは、生産緑地法によって定められた市街化区域内の農地です。
問題点や対策など、詳しく見ていきましょう。

生産緑地とは

生産緑地とは、市街化区域内にある山林や農地などです。

市街化区域は、都市計画で優先的に市街化を進めていくエリアとされており、原則として農業は制限されています。

ただし、農地面積が500㎡以上ある、農林漁業の生産活動がおこなわれている、などの条件を満たしていれば生産緑地として認定を受けられます。
日照などの条件が営農に適していて農林漁業の継続が可能であり、当該農地の所有者や関係権利者全員が同意している、なども生産緑地認定の条件です。

生産緑地は農地評価に基づいて固定資産税が計算されるため、他の市街化区域の土地に比べて、固定資産税の負担が軽減されます。

しかし、納税の優遇措置などのメリットがある一方で、建築物の新築禁止や営農義務などの行為制限もあります。

生産緑地の目的

生産緑地制度は、都市部の緑地の住宅地化や農地減少、生活環境の悪化などを防ぐために設けられました。
生産緑地では農林漁業の継続が求められ、地区内で建築物の改築や新築、宅地造成をおこなう際には市町村長の許可が必要です。
生産緑地に指定されると、固定資産税の軽減や相続税の納税猶予など、税制上の優遇措置を受けられますが、30年間農業を継続する義務が課せられます。

生産緑地の「2022年問題」と対策

1992年に改正された生産緑地法により、多くの農地が生産緑地となりました。
生産緑地に指定されると、30年間農業を継続する義務が課せられます。

2022年はその義務が解除される年にあたり、環境の悪化や一斉売却による地価の暴落が懸念され、「2022年問題」と呼ばれました。
政府は2022年問題対策として、生産緑地法を2017年に改正し、10年指定期間を延長できるようにしました。

また、これまでは500㎡が必要だった面積も、自治体の条例により面積要件が300㎡まで引き下げが可能となっています。

さらに、生産緑地に指定された土地でも、農地としての利用に加え、直売所や農家レストランの設置も認められるようになりました。

生産緑地を売却する際の指定解除の条件や注意点

2022年以降に生産緑地の指定期間が終了していても、指定は自動で解除されないため、すぐに売却を進められません。
生産緑地の指定解除には、いくつかの条件があります。
指定解除の詳しい条件や、指定解除をする際の注意点を見ていきましょう。

生産緑地の指定解除ができる条件

主たる農業従事者が亡くなった場合には、生産緑地の指定解除が可能です。
主たる農業従事者とは、生産緑地で中心となって農業をおこなっており、農地基本台帳に登録されている人物を指します。
主たる従事者が重度の病気や怪我などで営農が困難な状況にある場合にも、生産緑地の指定を解除可能です。
重度の病気や怪我とは、足または腕の障害や働けないほどの精神的な障害、両目の失明、あるいは1年以上の入院などが該当します。

なお、主たる従事者が複数いて他の従事者が農業を継続できる状態であれば、指定の解除は認められないため、注意しておきましょう。

また、生産緑地の指定から30年が経過している場合も、申請によって解除可能です。
30年の起算日は指定公示日で、生産緑地指定一覧表や各市町村に問い合わせて確認できます。

生産緑地を指定解除する際の注意点

生産緑地の指定解除には、まず指定解除の条件を満たしているかを確認し、書類を揃えて市区町村に生産緑地の買取の申し出をおこなわなければなりません。
生産緑地の指定が解除されると相続財産の評価が宅地並みとなり、固定資産税も宅地並みに課税されます。
生産緑地に指定されていたときと比較して、固定資産税が約10倍になるケースもあります。
急激な増税を緩和するための措置はありますが、5年後には生産緑地だったときの10倍の税額を支払わなければなりません。

また、相続税の納税猶予の特例が適用されていた場合、生産緑地の指定解除によって猶予されていた税金に利子税を加えた金額を納付する必要があります。
利子税は相続税の申告期限の翌日から年率3.6%で課税されるため、猶予期間が長ければ長いほど、利子税が増加します。
固定資産税や相続税への対策を、事前に準備しておきましょう。

生産緑地を売却するときの流れは?

生産緑地を売却する際、指定解除の条件を満たしていても、通常の土地のように簡単に売却できません。
生産緑地法に従い、まず自治体に対して買取申請をおこなう必要があります。 申請に必要なおもな書類や、買取申請から売却までの流れを詳しく見ていきましょう。

必要書類を揃える

生産緑地の指定から30年が過ぎているなどの解除条件を満たしているか確認し、所轄の自治体に買取申請をおこないます。
買取申請に必要な、おもな書類は以下のとおりです。

● 生産緑地に係る農業の主たる従事者証明書
● 生産緑地買取申出書
● 申出書に使用した実印の印鑑登録証明書
● 登記事項証明書
● 申請する土地の案内図

主たる農業従事者の病気などによる解除の場合は、医師の診断書も必要となります。

また、主たる農業従事者が亡くなり、相続登記が終わっていない場合は、遺産分割協議書の写しなども必要です。
必要な書類は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
生産緑地に係る農業の主たる従事者証明書を取得するには、1〜2か月程度の時間がかかります。
売却を検討している場合は、早めに取り寄せておくとよいでしょう。

自治体に買取申請をする

必要書類を揃えたら、生産緑地を管轄する自治体の窓口で買取申請をおこないます。
自治体は、買取申請を受けたあと、生産緑地を買い取るか否かを判断します。
自治体の買取価格は、農地ではなく一般宅地として査定され、自治体が買い取ればその土地は公用地となるでしょう。
自治体が生産緑地の規模や形状、周辺の状況を確認し、公園や緑地などの公共用地として利用できると判断した場合には、時価で買い取ってもらえます。
申請日から1か月以内に、自治体から買取の可否に関する通知が届きます。

自治体が買い取れない場合は斡旋がおこなわれる

自治体によっては、財政状況などの理由から、生産緑地を買い取ってもらえない可能性もあるでしょう。
買い取れなかった場合には、農業委員会が他の農林漁業従事者に対して、生産緑地の買取を斡旋します。
斡旋期間は2か月でこの期間内に買い手が見つかり、売却価格の話し合いがまとまれば、生産緑地の売却が可能です。

買い手が見つからなければ生産緑地の行為制限が解除される

斡旋期間が経過しても希望者が見つからず、買取の申し出から3か月経過した場合、生産緑地の行為制限が解除されます。
生産緑地は、営農義務や建築物の新築禁止などの行為制限があります。
行為制限が解除されると、農地から宅地への転用、建物の新築などが自由におこなえるようになり、土地の売却も可能です。

農地転用の許可を取得して売却する

自治体に申請して買い手が見つからなければ、生産緑地としての指定や行為制限が解除されます。

ただし、農地のままでは、所有権を第三者に移転できません。
農業委員会で農地転用の許可を取得し、変更手続きをおこなう必要があります。
法務局に農地転用の許可証を添付して、地目を雑種地、または宅地に変更すれば土地の売却ができるようになります。

さらに、生産緑地は、公有地の拡大の推進に関する法律に基づき、原則売買契約の3週間前までに届け出が必要です。
開発許可の取得には3か月程度かかり、登記上の地目を農地から宅地に転用する際にも2週間程度かかります。
通常の土地とは異なり、生産緑地を売却する場合は、関係各所への届け出や許可の取得に時間がかかるためご留意ください。

生産緑地を売却するメリット・デメリット

生産緑地の指定が解除されれば売却でき、地方に比べて売れやすいメリットや、固定資産税が高くなるデメリットなどがあります。
どちらも詳しく見ていきましょう。

メリット

生産緑地の多くは都市圏から比較的アクセスが良いため、宅地や雑種地として売却する場合は、地方に比べて買い手が見つかりやすいでしょう。
2022年問題の対策として、自治体の条例により、面積要件が500㎡から300㎡に緩和されました。
条件が満たされる場合には、200㎡のみを宅地に転用して売却できる点もメリットです。

また、生産緑地は税金面で優遇されていますが、農地としての適切な管理が指定条件として求められます。
生産緑地の指定を受けている間は、原則として農業をやめられませんが、最近では後継者のいない農家が少なくありません。
売却によって、家族を営農の義務から解放できるのも、メリットといえるでしょう。

デメリット

生産緑地は、農地のため固定資産税が低く設定されています。
緩和措置により、最初の5年間は一定の軽減が受けられますが、宅地に変更すると固定資産税が増加します。
場合によっては、税額が10倍以上になる場合もあるでしょう。
生産緑地の所有者が亡くなった場合、相続人には相続税の猶予が認められる優遇措置があります。

ただし、生産緑地を雑種地や宅地に転用して売却する際には、猶予されていた相続税を支払う必要がある点がデメリットです。
相続時まで遡って、現在までの延滞利息を含めた金額を納税しなければならないため、高額になる可能性があります。

また、生産緑地を売却すると、その土地の活用や農業ができなくなる点もデメリットです。
現在は生産緑地法が改正され、直売所や農家レストラン、農地の賃貸ビジネスなどの利用が可能になっています。

しかし売却すれば、土地活用による収益を得られなくなります。

生産緑地が売れないときはどうすればいい?

指定解除された生産緑地は、不動産会社へ依頼して売却するのが、一般的です。

しかし、農地であるため面積が広い場合が多く、買い手が見つかるまでに時間がかかる可能性があります。
市場に出してもすぐに売れない場合、固定資産税の負担など、売れるまでの期間が長ければ長いほどリスクをともないます。
指定が解除された生産緑地を早く売却するためにおすすめな方法が、買取です。
買取の場合、買取業者が直接買主となるため、1週間から1か月程度で現金化できるでしょう。

まとめ

生産緑地とは、市街化区域内の農地や山林などを指し、都市部の緑地の住宅地化や農地減少、生活環境の悪化を防ぐために設けられました。
通常の土地のように簡単に売却できるわけではなく、生産緑地法に従い、自治体に対して買取申請をおこなう必要があります。
生産緑地としての指定が解除されれば売却できますが、納税額が高額になる可能性があるため、売れない場合は早めに買取を検討しましょう。

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