・長屋は切り離せるの?
・切り離しで注意すべきポイントはある?
・費用はどのくらい必要?
長屋を切り離したいけど、費用面が不安で行動に移せない方もいるのではないでしょうか。
隣家と切り離す際は、トラブルにならないよう慎重に進める必要があります。
本記事では、長屋の切り離し方法や注意点、トラブル対策と工事費用を解説するので参考にしてください。
この記事でわかること
・切り離しの注意点
・切り離しにかかる費用
長屋切り離しの基礎
長屋全体を取り壊すのではなく、各住居を戸建てとして独立させる工事が切り離しです。
どのようにして工事がおこなわれるのか、必要な準備を含めて解体方法を解説します。
長屋とは
日本の伝統的な建物で、現代ではテラスハウスやタウンハウスとも呼ばれます。
江戸時代にはあった建築形式で、多くの人が住み助け合って生活できる一般的な住宅でした。
土地が狭く共同住宅を建てられないような場所にも建築でき、コストが抑えられる点がメリットです。
コストや効率のよさから、一戸建てより安い価格で住宅を手に入れられる魅力があります。
近代日本でも都市住宅として一般的で、現代に残る古い長屋には住居以外に利用されているものもあります。
2戸以上の住居が連結し壁を共有していますが、それぞれ居住スペースが分かれているのが特徴です。
居住スペースが独立しているため、二世帯住宅にも用いられます。
昔ながらの長屋は平屋が多く、地域によっては2階建ての建物もあります。
観光地などで見かける商家は、横に長く作られているため間違えられがちですが長屋ではありません。
室内は各戸ごとに階段や廊下があり、共有部分がない点が共同住宅との大きな違いです。
共同住宅は特殊建築物に該当し、長屋は該当しません。
解体工事方法
人が住んでいる長屋は勝手に解体できません。
住居間の壁を切り離し、新しく住居を建築するときに解体工事がおこなわれます。
軒や壁を共有しているため、隣住民の許可が必要です。
住民の許可なしでは解体工事を進められないだけでなく、建物を傷つけずに切り離しをおこなう必要があります。
長屋の解体実績があるだけでなく、高い技術力を持った業者を選びましょう。
隣接した住まいには人が生活しているため、隣人に対する配慮はもちろん、近隣住民に対して理解を求める必要もあります。
解体前には、残さなければならない必要な柱と不要な柱を選別し、修復が必要な箇所なども調べておきます。
長屋を解体すると建物が傾いたり耐震性が低くなったりしやすいため、どのように解体するのか補強工事の見極めが必要です。
長屋切り離しの事前準備
長屋切り離しをスムーズにおこなうには、事前準備が必要です。
トラブルにならないためにも、順序立てて切り離し工事に進みましょう。
まず、長屋は複数の住宅が密接しているため、切り離し工事の際には、所有者および居住者全員に連絡し許可を取ります。
複数の世帯を1つの建物で共有している長屋は、全員の同意を得られなければ分離は不可能です。
区分所有法によって、自分の住まいに不利になるような工事の場合には、異を唱える権利があります。
居住者全員が長屋の切り離しに賛同した場合、費用をどうするかを決めなければなりません。
全員で費用を分担するのか、切り離しを希望する人が全額負担するかを話し合いで決めていきます。
長屋の居住者と交流があれば費用を全員で出し合う話し合いも可能ですが、なかには切り離しに賛同してもお金を出したくない人もいるものです。
その場合には、長屋の切り離しを最初に希望した人が全額支払います。
長屋切り離しの賛同が得られたら、費用の見積りを依頼します。
費用を折半する場合、できるだけ費用の安いところに決めがちですが、複雑な工事に失敗すると長屋全体が被害を受けるため慎重さが大切です。
解体業者選びは、料金ではなく実績があるのか高い技術(技術者や機械など)を持ち、評判を見て選びましょう。
長屋切り離しの流れ
共有している壁を分離するため、各部屋には養生シートが張られ部屋には入れません。
工事に要する期間は業者から連絡があるため、隣人に説明しましょう。
作業が始まると工事の音が響き渡り、事前に話し合いをしていてもトラブルに発展するケースも少なくありません。
業者が十分な対策をしているのか、工事は法律で定められた時間帯でおこなわれているかを確認してください。
切り離し工事が完了すれば引き渡しです。
隣接部分に新しい壁ができているので、汚れや傷がないかを確認してください。
長屋全員の確認が終わり、問題がなければ引き渡しです。
補償期間内であれば、万が一不備があった場合には修繕可能です。
長屋切り離しのメリット・デメリット
長屋の解体は、トラブルになりやすいため慎重に進める必要があります。
長屋切り離しの特徴を知ったうえで、どのように進めるか考えましょう。
切り離しのメリット
リフォームやリノベーションを検討した場合、壁や軒が共用である長屋のままでは改装ができません。
共有部分を切り離し、独立した住居として立て直しすれば、自由にリフォームやリノベーションできます。
それにともない、耐震性の高い基礎部分に作り変え強度を高められます。
長屋は築年数が経過している物件が多く、十分な耐震基準に達していない可能性があるため、切り離しでリフォームやリノベーションができる点はメリットです。
自然災害に対応できるだけの土台にすれば、安心して生活できます。
切り離しのデメリット
長屋切り離しは細かな作業でおこなわれるため、時間と費用がかかります。
隣接した壁を新しく作るためには、各住居の基礎の調整や補強も必要です。
古い長屋の場合、耐震性が弱く基礎を修繕しなければいけないケースがあるため、費用が高額になりがちです。
リフォームを検討している方は、さらに費用が必要になるため、予算を決めておきましょう。
壁を新設すれば独立した住居になりますが、その分住居が狭くなります。
長屋は通常の住宅よりも狭い造りが多いため、部屋によっては窮屈に感じてしまいます。
どのくらい狭くなるか、事前に設計図などで確認してください。
長屋切り離しの注意点とトラブル対策
長屋切り離しをおこなう場合、いくつかの注意点やトラブル防止の対策を考えておきましょう。
ここでは特に多いトラブル事例と対策を解説します。
所有者が許可しない
部屋が狭くなるのが嫌であったり、騒音・高齢者がいるなど、許可をしない理由はそれぞれです。
許可をもらう以前に、話を聞いてくれないケースもあり、切り離しが不可能な場合もあります。
何とかして説得できればよいですが、しつこく訪問するのは迷惑行為となるためおすすめできません。
どうしても切り離しをしなければならない理由がある場合には弁護士に依頼もできますが、もめ事が大きくなるため諦めるべきケースもあります。
許可が出てから反対される
家族に反対されたり、解体工事を経験した人の話を聞いたりして「やめたい」と言われるケースもあります。
日頃から交流があり、関係が良好であれば起こりにくい事例です。
切り離し工事の内容が把握できていない場合にも、このような反対を受けやすいため、切り離したい理由をしっかり伝えましょう。
費用や騒音や粉塵トラブル対策なども、細かく説明すれば理解してもらえます。
切り離しできない
現地調査しなければ、切り離しができるかどうかわかりません。
構造上解体が難しい物件や、老朽化によって切り離しが難しいケースも少なくありません。
無理に切り離せば建物が傾いたり、補修に時間や費用がかかったりします。
安全が確約できれば、施工主が費用を負担し解決する場合もあります。
このように複雑な構造は、専門家による現地調査の結果報告や、工事内容を業者から説明してもらうと信頼性が増します。
解体工事中のクレーム
解体工事が始まると、騒音がひどい・粉じんで咳き込んでしまうなどのクレームが起きます。
クレームが入ると、工事の中止を余儀なくされるケースもあるため注意が必要です。
このようなクレームは、業者への事前の確認で予防できます。
リスクに関しても解体業者から詳細を説明してもらい、迅速に対応しましょう。
住民とのコミュニケーションが大切
工事が始まれば騒音が気になったり、粉じんが飛んで部屋が汚れたりします。
事前に説明を受けていれば問題ありませんが、普段から会話もなくコミュニケーションが取れていなければ関係が険悪になるケースもあります。
工事の説明に難癖をつけたり、切り離しに反対したりする人もいるでしょう。
コミュニケーションが取れていればクレームがなくなるわけではありませんが、丁寧に説明し謝罪すれば大きなトラブルを回避できます。
いつ、誰がどのような理由で切り離しを持ちかけてくるかわかりません。
近隣住民とは、日頃から適度なコミュニケーションを取っておきましょう。
長屋切り離しの費用
長屋切り離しの費用は、解体工事費用だけでなく付帯工事や補修工事費用がプラスされます。
木造が多く鉄筋よりも費用はかからないものの、平屋と2階建てでは費用が異なり、坪数で料金も違うため、見積りを確認しあらかじめ準備しておきましょう。
平屋10坪あたりで100万円、20坪で140万円が平均価格です。
切り離しは手作業になるため、手間と時間がかかり通常の解体工事よりも高額です。
鉄筋やコンクリート造であれば、木造よりさらに時間を必要とするため、必ず複数の業者から見積りを取り納得してから工事を始めましょう。
まとめ
長屋の切り離しは、従来の解体よりも繊細かつ技術を必要とする工事です。
壁をつくるだけでなく、基礎の見直しなど建物全体のバランスを考えて施工するため、前準備をしっかりおこない進めましょう。
今回の記事で紹介した情報を参考に、長屋解体を検討していただけますと幸いです。